建造物侵入

「勤務の小学校女子トイレに盗撮ビデオ 教師逮捕」(テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/200923027.html

事件自体はなんだまたエロ先生かと(女子小学生を娘に持つ親からすれば噴飯もの!!!)いうような内容なんですが、これ、逮捕容疑が、記事の内容からして恐らく刑法上の建造物侵入なんですよね。

逮捕容疑が固めきれないときに、証拠集めの時間稼ぎとして、こうした形式犯で「挙げて」おいて、後々の供述に基づいてじっくり令状捜査(販売目的が無かったか)、というのはなんとなく想像がつきます。

しかし、そもそも当該建造物(校舎)への出入りにつき管理権者(校長)に特別許されている(権限のある)教諭が、その管理権者の意図に反する目的(女子トイレへのビデオカメラ設置)で建造物に「侵入」したからといって、同罪が成立する、というのは、なんかこう、違和感が。

一般に入場が許されている場所への違法な目的での立入りにつき同罪が成立するというのが今の判例実務だから(無人ATMとか陸上競技場など)、それに従ったといえばそうなんだろうけれど。
しかし、従前に管理権者が立入り権限を委任的に認めている者が、法律の適用上明らかに違法とまではいえない行為(隠し撮り)をしたからといって、管理権者の意思に反するから同罪成立、というのはいささか荒っぽいなと。

要は、公共の場所で臀部を撫でたり、臀部などに接近して盗撮をしたりする行為は、一般的に都道府県が定める迷惑防止条例等で罰せられる(本件朝霞市のある埼玉県の場合6月以下の懲役か50万円以下の罰金)ところ、こういう私的目的(販売目的じゃなく)で、トイレなどの「公共の場所」でないところで、盗撮をした場合には、こういった条例でも処罰できないがために、軽犯罪法では処罰が軽すぎる(拘留または科料)から「仕方なく」建造物侵入罪が使われる、ということなんだろう。

じゃあ、迷惑防止条例の枠をもっと広げて、トイレ盗撮なんかも罰せられるようにしろや、という意見もありそうだが、それほど処罰の必要性が高まっているのなら、国会が制定する法律で対応したほうがいいんでないの、という気もする。
もっとも、先記のような「違和感」も理論的な領域のことに過ぎないので、建造物侵入罪が、そういった個人のプライバシー保護の役目も果たしていると考えることも、同様に、理論的には不可能ではない。

なお、ちょっと調べてみると、この手の私用盗撮行為は、主に建造物侵入で処罰されているようです。