減反やめ増産目指せ(日経経済教室:食料高騰下の農業政策(上) 山下一仁RIETI非常勤)


副見出しは「支援は直接支払いで:国内縮小で輸出を視野に」


概略以下。

・日本ではコメなどが高関税による保護政策により高価格を維持してきた一方、麦などは大量に輸入してきた。しかし穀物価格が国際的に上昇している中、不測時の食糧安全保障の観点から、こうした政策は今後採りえないであろう。



・食料安全保障上最終的に頼れるのは自国の農業である、ということを認識すべきだが、食料自給率は減少の一途である(39%)。これは、米価を下げ麦価を上げる政策を採れば避けえた事態だが、実際には逆の政策が採用された。すなわち、コメの生産調整=減反による米価調整と、麦の大量輸入である。95年の食管制廃止後もコメの生産調整は続いており、消費者にコスト負担を強いている。

・しかし、減反面積が全水田面積の4割強に達しているのに米価は下落傾向のままである。また農家側としても減反は限界、との声が強い。

・農地確保の観点からすると、公共事業で110万hの農地を造成したのに、生産調整の結果、宅地転用と耕作放棄で260万hの農地が失われている。明かに生産調整と価格維持を軸としたコメ政策は誤りである。



・まずは価格維持政策は放棄すべきである。著者の試算では、生産調整をやめた場合の国内産コメ価格は60キロ当たり9,500円まで低下し(現在14,000円)中国産米の価格を下回り、この価格低下によって国内需要も1千万トンに拡大する(現在850万トン)。

・この案に対しては「米価低下で農業依存度の高い主業農家が困る」との反論があるが、ならば価格低下分の8割を直接保障する策を採ればよい。総流通量のうち主業農家の占める割合は4割なので、この保障は現在生産調整で払っている1,600億円と同額で可能である。

兼業農家についても農地を主業農家に貸し出せば、現在得ていると思われる年10万円程度の農業収入よりも高い地代を得ることができる。

・更に、国内が少子高齢化で需要が伸び悩むのであれば、低価格を武器に海外輸出すればよい。食糧危機が生じたのなら、輸出分を国内用に振り向ければよい。



・EUも生産調整を廃止しようとしている。

・日本政府の首脳からも減反見直し示唆の意見が出ている。