「供給構造の改革こそ本筋」(日経:大田弘子政策研究大学院大教授)


シリーズ「景気急降下−政策の焦点は」の2回目は、構造改革の人、大田教授の登場。
ちなみに、この人と高橋洋一教授とで小泉構造改革が支えられていたのは、今では多くの人が知るところ...なのかな?(竹中氏はフロントマンで看板兼陰謀役、つまり政治家)。


以下大約で。

・米国・欧州の状況は「全力疾走中の骨折」で添え木で治療するような対策が必要だが、日本のそれは「内臓疾患を抱えての転倒」すなわち構造的に弱いところが機器によって更に弱まっていることによるので、自ずと採るべき対策も異なる。


・近年まれに見る世界同時好況は米国の消費が牽引、それは世界の余剰資金が米国の住宅市況にに投入されたことによって支えられていたもので、仮に今回の危機が過ぎてもこの好況が再現されることはない。世界経済は次のステージに移らざるを得ず、日本はこれを意識して構造改革に取り組み、「体質改善」をしていく必要がある。


・日本の構造的な弱み。
 1.サービス産業と農業の生産性の低さ
    政府による転廃業支援対策の遅れ、小規模ゆえIT投資などが進まない、など。
 2.グローバル化への取組みの遅れ(対日直接投資の低さなど)
    海外からの高度人材受入れ、対日直接投資の加速プログラム、など。
 3.人材のロス(硬直的な雇用慣行による)
    職業訓練


・これらの構造改革プログラムが、今般の金融危機によって経済政策の議論が短期的な景気対策一色になったせいで、遅れてしまっている。


・次の世界経済のステージはどういうものかまだよく判らないが、長い目で見てまだ成長過程にあるアジアの存在感がより高まるだろう。たとえば中国。アジアの中間層にアピールする製品やサービスなどの商品を提供できるか、がカギ。


・そのためには国内の生産性をたかめて潜在ニーズにあった商品を提供すること、海外に開かれたオープンな経済システムをつくって海外と密接に連携を図ることことが大事。


・危機をてこにすべき。景気対策の名の下に弱いところを弱いまま保護しても問題解決しなかった90年代を思い出せ。


最後ん所は小渕内閣のことですね。




追記)
あまり論理的に導かれるところでもないので書かなくてもよいかなとも思ったけど...


大田教授の基本路線は民事不介入と「小さな政府」である。
また、その立ち位置やキャリアパスから当然ともいえるが、いわゆる大企業やグローバル企業の経営者によって構成されるところの財界に都合の悪いことは仰らない。


よって、基本的にはグローバルに大儲けせんとする企業のことは放っておくという態度だし、雇用に関してもこれらの企業群に対して努力を促す、ということは言わない。


何がいいたいのかというと、硬直的な雇用慣習というのは新卒主義とか雇用流動性の不足とか女性の活用不足とか、そういうところに表れているのだと思うのだけれど、それは教授が解決策として挙げられている「職業訓練」では解消しないのではないか、ということなんですけどね。
つまり、そういった硬直性を打破してはじめて職業訓練支援策が効果を発揮するのでは。


もっと進んで言うと、雇用とはすぐれて「民事」なので、結局経営者の判断による。そのトレンドを形成するであろう「財界」にそれを促さない限り、少なくとも雇用に関する「構造改革」は画に描いた餅なんじゃないか、という気がします。


もしその点に気がつかれていてしかし回りに気を遣って言わないだけなら再登板を期待するし、なんなら次の政権にアプローチいたほうがいいんじゃ...なんて思ってしまいます。