雇用不安定の責任を企業に問う声


午前中は溜まりに溜まったウェブ記事をざっと読んだが、明るいニュースなんてこれっぽっちもないのが(スポーツ・芸能は知らん)きょう日のトレンドなんですかね。




で、比較的「庶民寄り」と思われるメディアの意見として、昨今の雇用が不安定になっているのは日経連会長企業をはじめとする大企業群が非正規社員である派遣・請負労働者を期間中途で契約解除しているからであり、これは企業の社会的責任の観点から許されざる愚挙であり...なんてのが結構幅を利かせているようですが、どうなんでしょうかね、これ。


確かに、契約条項にあることだし、あくまで解雇は派遣元と労働者間の契約の問題だから関係ない、という態度は人間道徳の観点からあまり誉められたものではないし、そんなこと言ってるとあまりいい死に方はしないだろうなとも思うのだけれども、なんか違和感があるなと。


というのも、もともと企業は「失われた十年」のあいだ、生産性の向上ならびに財務体質の改善に勤めてきたのであり、前者は過剰生産設備の削減、後者は固定費の圧縮によって図られるものであって、これらを重化学工業や電機産業でやろうとすると雇用政策としてはいわゆる正規労働者の削減という策を採らざるを得ないわけで。
要は、こんなことはもう十数年前にはわかってたんじゃないかと。


また、ここ数年の景気のいいときに経団連やその取り巻き政党(の最大派閥)の方からしばしばアナウンスされていた話として、我が国の法人税は国際比較でみて高くこのままでは企業誘致の点で他国に負けてしまう、というのがあったのだけれども、この法人税引下げ論というのは企業誘致ではなく外国資本の導入促進という観点で語られるのが通常であり(だから法人税引き下げと同時に、外国資本による企業への出資制限を原則なくす政策を導入するのが通常)、それだけでも我が国の大企業は随分としみったれで社会参加意識が低いなと思うところ、そもそもこういった企業は税が高けりゃ海外に生産拠点を移し、海外で労働者を調達してモノ作ってりゃいいや的な発想がある(で、実際そうやっているところもある)。
ってことは、少なくとも雇用という点について、日本国内で何がしかの責任を果たそうという意識はなく、仮にあっても相当低いものであることはハナから明白だったわけである。


これらの観点から見ると、実際に中途で労働契約を解除されて困っている人たちはともかく、少なくともメディアの側から今更企業の責任が...なんていうのも随分のんきな人たちだなあ、などと思ったり。その辺が違和感。



もっとも、そういうメディアの「庶民寄り」の報道を納得して受け取っている側に問題があるので、いつまで経ってもこういった報道も、本来の報道によって本来よくなっていくべき現実も、なかなかよくならない。やっぱり教育に問題があるのかな、ママン。